「人的資本開示」と健康経営の関係が、近年急速に注目されています。2023年から上場企業に義務付けられた有価証券報告書への人的資本情報の記載では、従業員の健康・安全に関するデータ開示が求められます。今回は、人的資本開示の概要と、健康経営KPIをどう開示に活かすかを解説します。

人的資本開示とは何か
人的資本開示とは、従業員(人)を「コスト」ではなく「資本(投資対象)」として捉え、その価値・育成・活用に関する情報を投資家・ステークホルダーに開示することです。2023年3月期から、上場企業の有価証券報告書に「人材育成方針」「社内環境整備方針」とその指標・目標・実績の記載が義務化されました。経済産業省の人的資本経営コンソーシアムでは、開示の指針・事例集が公開されています。
人的資本開示で求められる健康・安全関連の指標
ISO 30414(人的資本に関する国際規格)やSASB(サステナビリティ会計基準)など、グローバルの開示フレームワークでは、以下の健康・安全指標の開示が推奨されています。
- 労働災害発生率(LTIR)・死亡災害件数
- 健康診断受診率
- ストレスチェック実施率・高ストレス者割合
- 欠勤率・休職率
- 従業員エンゲージメントスコア
- 喫煙率・肥満率(BMI)などの生活習慣指標

健康経営KPIを人的資本開示に活かす方法
ステップ1:開示すべき健康指標を整理する
自社の健康経営KPIと、開示フレームワークで求められる指標を照合します。多くの健康経営KPI(受診率・ストレスチェック・離職率・エンゲージメント)は、人的資本開示の健康・安全指標と重複します。健康経営KPIの管理が整っていれば、開示データの準備コストを大幅に削減できます。
ステップ2:数値の継続的な収集・管理体制を整備する
人的資本開示では単年の数値だけでなく、複数年の推移も重要です。健康経営の指標を毎年同じ定義で収集・保管する仕組みを作ることで、開示時に「前年比」「3年間の推移」を示せるようになります。
ステップ3:健康経営優良法人認定を開示の根拠として活用する
健康経営優良法人の認定を受けた企業は、認定そのものを「健康経営への取り組みを第三者機関が評価した証拠」として開示資料に記載できます。認定ロゴ・認定番号・取得年度を有価証券報告書・統合報告書・サステナビリティレポートに掲載することで、投資家・採用候補者へのアピール材料になります。
非上場・中小企業も取り組む意義
人的資本開示の法的義務は現在上場企業が対象ですが、取引先・金融機関・採用候補者からの情報開示要求は中小企業にも及び始めています。健康経営に早期に取り組み、KPIを整備することは、将来の開示義務化への備えとしても重要です。
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よくある質問(FAQ)
- Q: 人的資本開示はいつから義務化されましたか?
- A: 2023年3月期から上場企業の有価証券報告書への記載が義務化されました。従業員を「資本」として捉え、人材育成方針や健康・安全に関する指標・目標・実績の開示が求められています。
- Q: 人的資本開示で求められる健康・安全指標にはどのようなものがありますか?
- A: ISO 30414やSASBなどの国際フレームワークに基づき、労働災害発生率・健康診断受診率・ストレスチェック実施率・欠勤率・従業員エンゲージメントスコアなどの開示が推奨されています。
- Q: 健康経営KPIを人的資本開示に活かすにはどうすればよいですか?
- A: 自社の健康経営KPIと開示フレームワークの指標を照合し、継続的な数値収集・管理体制を整備することが重要です。多くのKPIは人的資本開示の健康・安全指標と重複するため、準備コストを削減できます。
- Q: 健康経営優良法人認定は人的資本開示にどう役立ちますか?
- A: 認定を受けた企業は、第三者機関による評価の証拠として有価証券報告書・統合報告書に認定ロゴや認定番号を掲載できます。投資家や採用候補者へのアピール材料としても有効です。
- Q: 非上場企業や中小企業でも人的資本開示に取り組む必要がありますか?
- A: 法的義務は現在上場企業が対象ですが、取引先・金融機関・採用候補者からの開示要求は中小企業にも広がっています。早期にKPIを整備することで、将来の義務化への備えにもなります。