人的資本開示において健康関連指標をどのように有価証券報告書へ記載すべきか、指標の選び方とデータ整備の進め方を解説します。
- 人的資本開示で健康関連指標が求められる背景と有価証券報告書上の位置づけ
- 離職率・労災発生率・プレゼンティーイズムなど記載すべき代表的な指標の種類
- 指標データを毎年継続して収集・開示するための5ステップの整備手順
- 開示が形骸化しないための社内体制のつくり方
- 健康経営コンサルを比較・選定する際に確認すべきポイント
人的資本開示で健康関連指標を有価証券報告書に記載するには、離職率・労働災害発生率・プレゼンティーイズム損失額など自社のマテリアリティに応じた指標を3〜5項目選定し、毎年同一基準で測定・開示できるデータ収集体制を整えることが結論です。
人的資本開示における健康指標とは?有価証券報告書での位置づけ
人的資本開示における健康指標とは、従業員の心身の健康状態や労働安全衛生の状況を定量的に示す情報であり、2023年3月期決算から有価証券報告書の「従業員の状況」欄での記載対象となっている項目です。
経済産業省が推進する人的資本経営の枠組みでは、健康・安全は人材育成や多様性と並ぶ重要な開示テーマの一つに位置づけられています。経済産業省は人的資本経営の指標例として労働災害発生率やメンタルヘルス不調による休職率などを示しており、企業は自社の事業戦略との関連性(マテリアリティ)を踏まえて開示項目を選定する必要があります。
なお、厚生労働省が公表する労働安全衛生に関する統計データは、自社指標との比較(ベンチマーク)にも活用できます。厚生労働省の統計を参照することで、業界平均との差分を有報の説明資料に加えることも可能です。
有価証券報告書に記載する健康指標は何を選べばよいか?
有価証券報告書に記載する健康関連指標は、「アウトプット指標」「アウトカム指標」「投資・取り組み指標」の3分類から自社の重要課題に合わせて選ぶのが基本です。すべてを網羅する必要はなく、事業内容とリスクに直結する指標に絞り込むことが記載の信頼性を高めます。
| 分類 | 代表的な指標例 | 開示の目的 |
|---|---|---|
| アウトプット指標 | 健康診断受診率、ストレスチェック受検率 | 取り組みの実施状況を示す |
| アウトカム指標 | 労働災害発生率、休職・離職率、プレゼンティーイズム損失額 | 健康施策の成果・リスクを示す |
| 投資・取り組み指標 | 健康経営関連予算、産業医・保健師の配置人数 | 投資規模と体制を示す |
特に投資家からの関心が高いのはプレゼンティーイズム(疾患や不調を抱えたまま出社し生産性が低下する状態)による損失額です。自社のプレゼンティーイズム損失を可視化したい場合は損失額シミュレーターで概算値を把握しておくと、有報の記載内容に説得力を持たせられます。
人的資本開示で健康指標を整備する手順は?データ収集の5ステップ
人的資本開示で健康指標を整備する手順は、①現状の指標棚卸し→②マテリアリティに基づく指標選定→③測定基準の統一→④データ収集フローの構築→⑤継続開示のPDCA化という5ステップで進めるのが実務的です。
- 指標棚卸し:健康診断結果、ストレスチェック、勤怠データなど既存データを一覧化する
- 指標選定:事業戦略上のリスク(離職・生産性低下等)に直結する指標を3〜5項目に絞る
- 測定基準の統一:算出方法・対象範囲(正社員のみか非正規含むか等)を明文化する
- データ収集フローの構築:人事システムと健康管理データを連携し、年1回以上の定点観測を仕組み化する
- 継続開示のPDCA化:前年比較・業界比較を交えて有報の記載を毎期更新する
例えば健康づくり施策の参加指標として「週1回15分のウォーキング企画」のような軽負荷プログラムを導入する企業では、参加率だけでなく3〜4年程度続いているかを追跡している事例もあり、単年の実施率だけでなく中長期の定着状況を示す指標として有報にも活用できます。
健康指標のデータが形骸化しないための運用体制とは?
健康指標のデータが形骸化しないための運用体制とは、指標のオーナー部署を明確にし、経営会議で年1回以上進捗を報告する仕組みを持つことです。データを集めるだけで活用されない状態は、投資家からの信頼性を損なう最大の要因になります。
人事部門だけで指標管理を抱え込むと、産業保健スタッフとの連携不足により数値の裏付けが弱くなり、開示内容が形骸化しやすくなります。健康経営の取り組み自体が形骸化している場合は、形骸化解決ページで原因別の対処法を確認しておくと、指標整備と同時に運用面の課題も解消できます。
健康経営コンサルの比較・選び方で失敗しないためのポイントは?
健康経営コンサルの比較・選び方で失敗しないためのポイントは、「人的資本開示の指標設計まで対応できるか」「業種別のベンチマークデータを保有しているか」の2点を確認することです。健康施策の実行支援だけでなく、有報記載に耐えるデータ整備まで一貫して伴走できるかが選定の分かれ目になります。
自社に合ったコンサルを見極めたい場合は、比較ページで支援範囲や費用体系の違いを確認したうえで、複数社に指標設計の提案を依頼することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- Q: 人的資本開示で健康指標の記載は義務ですか?
- A: 現時点で健康指標そのものの記載項目は法定必須ではありませんが、有価証券報告書の人的資本欄で自社が重要と判断した指標の開示が実質的に求められています。
- Q: 有価証券報告書に載せる健康指標は何個くらいが適切ですか?
- A: 網羅性より一貫性が重視されるため、自社の重要課題に紐づく指標を3〜5項目に絞り、毎年同じ基準で開示し続けることが望ましいとされています。
- Q: プレゼンティーイズムの指標はどう算出すればよいですか?
- A: 標準化された質問票で自己申告データを収集し、年間人件費に生産性低下率を乗じて損失額を試算する方法が一般的です。
- Q: 健康指標のデータはどの部署が管理すべきですか?
- A: 人事部門と産業保健スタッフが共同でオーナーとなり、経営会議に定期報告するルールを設けることで数値の信頼性と継続性が保たれます。
- Q: 中小企業でも人的資本開示の健康指標は準備すべきですか?
- A: 有価証券報告書の提出義務がない中小企業でも、採用力強化や取引先評価の観点から健康指標を整備しておく価値は高まっています。
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