「健康経営の費用対効果を経営層に説明できない」——人事担当者からよく聞く悩みです。健康経営への投資は、その効果が数字で見えにくいため、予算承認が下りにくいことがあります。今回は、健康経営のROIを実務レベルで可視化するための考え方と指標を解説します。

健康経営の費用対効果はなぜ見えにくいのか
健康経営の投資効果は「病気にならなかったこと」「休職しなかったこと」という「起きなかった損失」として現れます。これは会計上の利益として直接計上されないため、経営層に伝わりにくい構造があります。だからこそ、あらかじめ「何を測るか」を定義しておくことが重要です。
健康経営のROIを測る5つの指標
指標1:医療費・健保コストの変化
健保組合や協会けんぽのデータと連携することで、従業員一人あたりの医療費推移を追跡できます。健康経営施策の導入前後で比較することで、医療費削減効果が数字で示せます。
指標2:アブセンティーイズム(欠勤率)
病気や体調不良による欠勤・休職率の変化を追います。休職1人あたりのコスト(代替要員費・採用費・生産性低下)は平均で年間200〜500万円とも言われており、1件防ぐだけで大きなROIになります。
指標3:プレゼンティーイズム(生産性低下)
体調不良のまま出勤している状態(プレゼンティーイズム)による生産性低下は、アブセンティーイズムの2〜3倍のコストがかかるとされています。経済産業省の健康経営推進ページでも、プレゼンティーイズムの測定が推奨されています。
指標4:離職率・採用コストの変化
健康経営に取り組む企業では、従業員満足度の向上により離職率が低下する傾向があります。中途採用1人あたりのコストを100万円とすると、離職が年5件減るだけで500万円の削減効果です。
指標5:採用応募数・品質の変化
健康経営優良法人の認定取得後、求人への応募数が増えた企業は多くあります。採用コスト・人材の質の変化を記録しておくことで、投資対効果の根拠になります。

費用対効果の計算例
たとえば年間100万円の健康経営施策(健康診断充実・ストレスチェック強化・運動プログラム)を導入した場合:
- 休職1件予防:300万円のコスト削減
- 離職2件予防:200万円のコスト削減
- 医療費削減:50万円
合計550万円のリターンに対して投資100万円なら、ROIは450%です。もちろんこれは試算ですが、こうした「ストーリー」を持って経営層に説明することが大切です。
まず測定から始めることが大切
ROIを示すには、現状値の把握が不可欠です。「今の離職率は何%か」「休職者は年何人か」「健康診断の有所見率は何%か」——これらのベースラインを記録しておかなければ、後から効果を比較できません。健康経営を始める前に、まず現状の数字を整理しましょう。
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よくある質問(FAQ)
- Q: 健康経営の費用対効果が経営層に伝わりにくい理由は何ですか?
- A: 健康経営の効果は「病気にならなかった」「休職しなかった」という起きなかった損失として現れるため、会計上の利益に直接計上されず、経営層に伝わりにくい構造があります。
- Q: 健康経営のROI測定に使う5つの指標とは何ですか?
- A: 医療費・健保コストの変化、アブセンティーイズム(欠勤率)、プレゼンティーイズム(生産性低下)、離職率・採用コストの変化、採用応募数・品質の変化の5つが主要な指標です。
- Q: プレゼンティーイズムとアブセンティーイズム、コストが大きいのはどちらですか?
- A: プレゼンティーイズム(体調不良のまま出勤)の方が大きく、アブセンティーイズム(欠勤・休職)の2〜3倍のコストがかかるとされています。見えにくい分、測定と対策が重要です。
- Q: 健康経営のROI計算例を教えてください。
- A: 年間100万円の施策で、休職1件予防(300万円削減)・離職2件予防(200万円削減)・医療費削減(50万円)の計550万円のリターンが見込めれば、ROIは450%になります。
- Q: 健康経営のROI測定を始めるには何から手をつければよいですか?
- A: まず現状のベースライン記録が重要です。離職率・休職者数・健康診断有所見率などを把握しておくことで、施策導入後の効果を比較・数値化できるようになります。