熱中症対策の義務化により、企業は報告体制・手順・周知を整える必要があります。中小企業が現場に定着させる手順を解説します。
- 2025年6月に始まった熱中症対策の義務化の内容と罰則
- 義務の対象になるWBGT28度・気温31度の基準
- 報告体制を3ステップで作る方法と、5つの応急手順
- WBGT計測を週1回15分の振り返りで現場に定着させる運用
熱中症対策は2025年6月から企業の法的義務であり、違反すると6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。報告体制の整備、応急手順の作成、関係者への周知の3点を整え、WBGT計測で作業を管理するのが結論です。
熱中症対策の義務化とは?企業に課される3つの義務
熱中症対策の義務化とは、2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、熱中症のおそれがある作業を行う企業に3つの対策を罰則付きで求める制度である。
- 報告体制の整備:熱中症の疑いがある人を早期に見つけ、報告する連絡先と担当者を決める
- 実施手順の作成:作業離脱、身体の冷却、医療機関への搬送、救急要請の流れを決める
- 関係作業者への周知:体制と手順を、働く全員に知らせる
厚生労働省によると、2024年の職場での熱中症による死亡者は30人、休業4日以上の死傷者は1,257人にのぼる。義務に違反した場合、労働安全衛生法に基づき6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となる。
この話、マンガで読めます(無料・登録なしで途中まで)健康経営が「お飾り」になる会社のワケマンガで読む →義務化の対象はどんな作業?WBGT28度・気温31度の基準
対象は、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業である。屋外の建設・運送だけでなく、工場、倉庫、厨房などの屋内作業場も含まれる。
| WBGT値 | 危険度 | 現場の対応 |
|---|---|---|
| 25度未満 | 注意 | 水分補給の声かけ |
| 25〜28度 | 警戒 | 休憩回数を増やす |
| 28〜31度 | 厳重警戒(義務の対象) | 体制・手順を発動し、激しい作業を減らす |
| 31度以上 | 危険 | 原則、作業の中止・短縮を検討 |
熱中症の報告体制は何から作る?中小企業の3ステップ
報告体制は、「誰が・誰に・何分以内に連絡するか」を1枚にまとめることから始めるのが最短である。
- 責任者と代理を決める:不在でも止まらないよう、必ず2人以上を指名する
- 連絡先を一覧にする:119番、搬送先の医療機関、産業医、社長や管理者の携帯番号を並べる
- 見守りの仕組みを作る:単独作業を避け、2人1組の声かけや1〜2時間ごとの定時連絡を決める
本人の自己申告に頼らないことが重要で、周囲が「ふらつき」「口数の減少」に気づいたら報告する、というルールを加える。
熱中症の応急手順は?現場で迷わない5つの動き
意識がない、受け答えがおかしい、自力で水が飲めない場合は、ただちに119番通報するのが原則である。手順は次の5つに絞ると現場で迷わない。
- 涼しい場所へ移動させる
- 衣服を緩め、安静にさせる
- 首・脇・脚の付け根を保冷剤などで冷やし、水をかけて扇ぐ
- 意識がはっきりしていれば、水分と塩分を少しずつ摂らせる
- 改善しない場合は救急要請し、回復しても1人にせず見守る
この5項目を休憩所に掲示し、年に1回は実際に声に出して確認しておく。
WBGT計測はどう始める?機器と運用のポイント
WBGT計測は、作業場所に近い位置に計測器を置き、作業時間帯に定期的に測って基準超えで休憩や作業調整につなげる運用である。
- 測る場所:日陰ではなく、実際に作業する場所の近く
- 測る頻度:作業中は1時間ごとを目安に記録する
- 基準超過時:休憩の追加、作業時間の短縮、冷却グッズの配布を行う
屋外の目安には、環境省の熱中症予防情報サイトの予測値も使える。ただし現場の実測値が優先である。
義務化対応を現場に定着させるには?週1回15分で形骸化を防ぐ
定着の鍵は、週1回15分の振り返りを固定することである。制度は作って終わりにすると形骸化しやすく、短い習慣に落とし込むほうが続く。
- 5分:先週のWBGT記録を見て、基準超えの日の対応を確認する
- 5分:ヒヤリハット(ふらつき、頭痛など)を共有する
- 5分:報告ルートと応急手順を1項目ずつ声に出して確認する
健康経営の支援現場では、取り組みの平均継続期間は3〜4年であり、小さな習慣ほど長く続く。熱中症の手前の「だるさ」「集中力の低下」もプレゼンティーイズムの一因となる。暑さ対策は事故防止だけでなく、生産性の維持にもつながる。
よくある質問(FAQ)
- Q: 熱中症対策の義務化は中小企業や小規模事業所にも適用されますか?
- A: 適用されます。事業規模や業種を問わず、WBGT28度以上または気温31度以上の環境で1時間以上連続、または1日4時間超の作業が見込まれる事業者が対象です。屋内作業場も含まれます。
- Q: 義務に違反するとどうなりますか?
- A: 労働安全衛生法に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。罰則を避けるだけでなく、重篤化を防ぐため体制と手順を文書で残しておくことが重要です。
- Q: 報告体制や手順は文書にする必要がありますか?
- A: 書式は法令で指定されていませんが、関係作業者への周知が必要なため文書化が実務上ほぼ必須です。連絡網と応急手順をA4一枚にまとめて掲示すると、周知の記録としても有効です。
- Q: WBGT計測器は必ず必要ですか?どれくらいの費用ですか?
- A: 作業場所のWBGTを把握することが前提のため、計測器の備えが望ましいです。簡易型は数千円から、JIS規格適合品は数万円程度が目安です。まず1台を作業場所の近くに置くことから始めましょう。
- Q: 熱中症の疑いがある作業者を見つけたら、まず何をしますか?
- A: 涼しい場所へ移し、衣服を緩めて首・脇・脚の付け根を冷やします。意識がない、受け答えがおかしい、水を自力で飲めない場合は迷わず119番通報し、回復しても1人にせず見守ります。
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