介護離職を防止したい企業向けに、2025年施行の周知義務、従業員アンケート、相談体制の整え方を実務目線で解説します。
- 介護離職が企業に与える損失と、防止に取り組むべき理由
- 2025年4月施行の改正育児・介護休業法で企業に課された周知義務の中身
- 介護休業・介護休暇など5つの両立支援制度の違い(比較表)
- 従業員アンケートで介護の予備群を把握する設問と進め方
- 週1回15分設計を含む、相談体制づくりの4ステップ
企業が介護離職を防止する最短ルートは、①法定の個別周知・意向確認を漏れなく行い、②アンケートで介護の予備群を把握し、③相談窓口を一本化することである。介護休業は通算93日で、介護の体制を整える準備期間として周知する。
介護離職の防止に企業が取り組むべき理由は?
介護離職とは、家族の介護を理由に従業員が仕事を辞めることであり、企業にとっては経験豊富な人材の流出である。総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、介護・看護を理由とする離職者は年間約10.6万人にのぼる。
経済産業省は、2030年に仕事と介護を両立するビジネスケアラーが約318万人、それに伴う経済損失が約9.1兆円に達すると試算している(経済産業省 健康経営・ヘルスケア関連資料)。介護は突然始まり、管理職や中核を担う40〜50代に集中するため、1人の離職が組織に与える影響は大きい。
離職に至らなくても、介護を抱えながら働く従業員は睡眠不足や心配事で集中力が落ち、プレゼンティーイズム(出勤していても本来の力を発揮できない状態)による損失が生じる。自社の影響額は損失額シミュレーターで試算できる。
2025年4月施行の改正で企業に課された周知義務とは?
企業には、改正育児・介護休業法により、①介護に直面した旨を申し出た従業員への個別の制度周知と意向確認、②介護に直面する前の早期の情報提供、③雇用環境の整備が義務づけられている(2025年4月1日施行)。厚生労働省によると、これらは企業規模を問わずすべての事業主が対象である(厚生労働省 育児・介護休業法について)。
- 個別周知・意向確認:申出があった従業員に、介護休業や介護休暇などの制度を面談や書面で伝え、利用の意向を確認する。取得を控えさせるような働きかけは認められない。
- 早期の情報提供:40歳を迎える年など、介護に直面する前の段階で制度を知らせる。
- 雇用環境の整備:研修の実施、相談窓口の設置、取得事例の提供、制度と方針の周知のいずれかを講じる。複数の組み合わせが望ましい。
- テレワークの措置:要介護状態の家族を介護する従業員がテレワークを選べるよう、措置を講じる努力義務がある。
介護休業・介護休暇など両立支援制度の違いは?
主な両立支援制度は5つあり、介護休業は対象家族1人につき通算93日、介護休暇は年5日が基本である。目的と日数が異なるため、次の表で整理して周知する。
| 制度 | 内容 | 期間・日数の目安 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 要介護状態の家族を介護するための休業 | 対象家族1人につき通算93日(3回まで分割) |
| 介護休暇 | 通院の付き添いや手続きのための休暇 | 年5日(対象家族2人以上で年10日) |
| 所定外労働の制限 | 残業の免除 | 1回の請求で1か月以上1年以内、回数制限なし |
| 短時間勤務などの措置 | 短時間勤務、フレックスタイムなど | 利用開始から3年の間で2回以上 |
| 介護休業給付金 | 休業中の収入を補う雇用保険の給付 | 休業開始時賃金日額の67%(通算93日分) |
93日は介護を自分で担い続ける期間ではなく、ケアマネジャーに相談し、介護サービスを組み立てる準備期間である。この位置づけを伝えると、「長期の休みは取れない」と考えて辞めてしまう判断を防ぎやすい。
従業員アンケートで介護の実態を把握する方法は?
無記名で、現在の介護状況・3年以内の介護の見込み・制度の認知度・仕事を続ける上での不安の4点を聞くのが基本である。介護は周囲に話しにくいため、実態は申出の件数よりはるかに多いと考えるべきである。
- 現在、家族の介護をしているか(している/していない)
- 今後3年以内に介護が必要になる可能性があるか
- 介護休業や介護休暇などの制度を知っているか
- 介護と仕事の両立で不安なこと(時間、費用、相談先、職場の理解など)
特に40歳以上は全員を対象にし、部署別・年代別に傾向を見る。結果は経営層に共有し、半年から1年ごとに同じ設問で再調査すると改善が追える。アンケートは取りっぱなしにすると形骸化解決ページで扱っているような状態に陥りやすいため、結果を受けた次の一手まで決めて実施する。
介護離職を防ぐ相談体制はどう作る?
社内の窓口を一本化し、管理職の一次対応ルールと外部の専門機関への案内を組み合わせるのが有効である。次の4ステップで進める。
- 窓口を明確にする:人事、産業医、外部の相談サービスなどの連絡先を一覧にし、匿名でも相談できることを伝える。
- 管理職を教育する:部下から介護の相談を受けたときの聞き方、個人情報への配慮、「辞める前にまず相談してほしい」という声かけを研修で共有する。
- 週1回15分設計で状況を拾う:介護中の従業員とは、上司または人事が週1回15分の短い確認の時間を設け、勤務時間の調整や負担の変化を早い段階でつかむ。
- 地域の資源につなぐ:地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談方法を案内し、仕事と介護の両面から支える。
当社が健康経営の支援で推奨している週1回15分の面談は、長時間を確保しにくい管理職でも続けやすく、離職の兆しを早く拾える点が利点である。
介護離職の防止で企業が失敗しないためには?
失敗の多くは、制度があっても従業員に届いていないことが原因である。次の3点を点検してほしい。
- 周知が掲示や社内規程の掲載だけで終わっている:法定の個別周知は、面談や書面で行い、記録を残す。
- 相談窓口が使われていない:利用実績を確認し、匿名で相談できる経路を加える。
- 管理職が制度を知らない:最初に相談を受けるのは上司であるため、管理職への研修を優先する。
外部の専門家に支援を依頼する際のコンサル比較や選び方は、比較ページにまとめている。
まとめ:介護離職の防止は「周知・把握・相談」の順で進める
法定の周知義務を確実に果たし、アンケートで実態を把握し、相談体制で早期に支える。この3つがそろえば、介護を理由に辞める従業員を減らせる。まずは自社の周知状況の点検から始めたい。
よくある質問(FAQ)
- Q: 介護離職を防止するために企業が最初にすべきことは?
- A: まず法定の個別周知・意向確認の運用を整え、次に従業員アンケートで介護の実態を把握します。両方がそろうと、必要な相談体制や制度の改善点が見え、優先順位をつけやすくなります。
- Q: 介護休業は何日取れますか?
- A: 対象家族1人につき通算93日まで、3回に分割して取得できます。原則として2週間前までに申し出ます。期間中は雇用保険から休業開始時賃金日額の67%の介護休業給付金が支給されます。
- Q: 従業員への制度の周知は何歳から必要ですか?
- A: 改正法では、介護に直面する前の早期の情報提供が求められ、40歳を迎える年などが目安とされています。あわせて、介護の申出があった際は個別周知と意向確認も必要です。
- Q: 介護の相談窓口は社内だけで足りますか?
- A: 人事や産業医の窓口があれば足りますが、社内には話しにくい従業員もいます。外部の相談サービスや地域包括支援センターの案内を併用すると、相談されやすくなります。
- Q: 介護に関する従業員アンケートでは何を聞けばよいですか?
- A: 現在の介護状況、3年以内の介護の見込み、制度の認知度、仕事を続ける上での不安の4点が基本です。無記名で実施し、結果は年1回など定期的に見直して施策に反映します。
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