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健康診断を拒否する従業員への対応|受診義務と懲戒の可否

2026-09-17

健康診断を拒否する従業員への対応|受診義務と懲戒の可否

健康診断を拒否する従業員への対応に悩む人事担当者は多く、受診義務や懲戒処分の可否を正しく理解することが重要です。

この記事でわかること

  • 健康診断拒否が労働安全衛生法違反にあたる根拠
  • 懲戒処分が認められた判例(電電公社帯広局事件)のポイント
  • 受診勧奨から懲戒までの実務対応フロー5ステップ
  • 就業規則に盛り込むべき受診義務条文のサンプル
  • 拒否を放置した場合に会社が負う法的・経営的リスク
この記事の要点

結論として、労働安全衛生法66条5項により従業員には健康診断を受診する義務があり、正当な理由のない拒否には就業規則に基づき懲戒処分を科すことも可能です。まずは受診勧奨を尽くすことが前提となります。

健康診断拒否は法律違反?従業員の受診義務とは

労働安全衛生法第66条第5項により、労働者には事業者が実施する健康診断を受診する義務が定められている。事業者側にも同条第1項で実施義務が課されており、健康診断は会社と従業員の双方に義務が発生する制度である。

厚生労働省によると、定期健康診断の受診率は全国平均で高水準にあるとされる一方、個人の事情や不信感から一部の従業員が受診を拒否するケースが人事労務の現場で課題となっている。詳細は厚生労働省の労働安全衛生に関するページで確認できる。

ただし、会社指定以外の医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出した場合は、会社指定の健診を受けなくても法的義務を果たしたとみなされる(同条第5項ただし書き)。

従業員が健康診断を拒否する主な理由は?

拒否理由の多くは、「持病や既往症を知られたくない」「多忙で時間が取れない」「健診結果が人事評価に影響することへの不安」の3つに集約される。

  • 持病・既往症を上司や会社に知られることへの心理的抵抗
  • 業務多忙による受診時間の確保困難
  • 健診結果が評価・異動に影響するのではという不信感
  • 過去に健診で不利益な扱いを受けた経験がある

これらの背景を把握せずに一律に業務命令だけで対応すると、かえって不信感を強め、拒否がこじれるケースが多い。

健康診断拒否に対して懲戒処分は可能か|電電公社事件から学ぶ判例

正当な理由のない拒否に対しては、就業規則に受診義務規定があれば懲戒処分を科すことも法的に可能である。最高裁は昭和61年の電電公社帯広局事件で、業務命令としての健康診断受診指示に従わなかった従業員への懲戒処分を有効と認めた。

この判例のポイントは、健康診断が労働者本人の健康管理だけでなく、会社が負う安全配慮義務の履行手段として位置づけられ、受診命令には業務上の合理性・必要性が認められるとされた点にある。逆に言えば、必要性の乏しい過剰な検査項目の強要は無効となるリスクもある。

健康診断拒否への対応フロー|受診勧奨から懲戒までの5ステップ

実務対応は、受診勧奨→面談→業務命令→弁明機会の付与→懲戒処分の5段階を踏むことが原則である。段階を飛ばして即座に懲戒に踏み切ると、手続きの適正性を欠くとして処分自体が無効とされるおそれがある。

対応段階 具体的な対応内容 法的根拠・注意点
①受診勧奨 書面で受診を促し、拒否理由を確認する 安衛法66条5項に基づく義務の説明
②面談 上長・産業医を交えて不安や事情をヒアリング プライバシーへの配慮が必須
③業務命令 就業規則を根拠に受診を業務命令として指示 命令の合理性・必要性が求められる
④弁明機会の付与 懲戒予告を行い、本人の言い分を聴取 手続きの適正性を担保
⑤懲戒処分 けん責・減給・出勤停止等を段階的に実施 電電公社帯広局事件などの判例を参考に判断

受診勧奨を怠って放置すると、健康診断の受診率だけでなく健康経営施策全体が形骸化しやすくなる。形骸化解決ページで解説する通り、施策の3〜4年継続率は初期対応の徹底度に大きく左右される。産業医面談を「週1回15分設計」で定例化しておくと、拒否の背景にある不安を早期に把握しやすい。

就業規則に受診義務を明記する方法とサンプル文言

受診義務を懲戒事由として機能させるには、就業規則に受診義務条項と懲戒事由を明記しておく必要がある。判例上も、就業規則に根拠がない状態での懲戒処分は無効とされるリスクが高い。

サンプル文言としては、「従業員は会社が指定する時期・機関において実施する健康診断を受診しなければならない。正当な理由なくこれを拒否した場合は、就業規則第○条(懲戒)の定めるところにより処分することがある」といった条文が一般的である。あわせて、代替措置(自己負担での他院受診と結果提出)の規定も設けておくとトラブルを防ぎやすい。

健康診断拒否を放置するとどうなる?企業が負うリスク

拒否を放置すると、安全配慮義務違反による損害賠償リスク、労基署からの是正勧告、職場規律の低下、生産性損失の4つのリスクが生じる。

  • 労災発生時に安全配慮義務違反を問われ、損害賠償責任を負う可能性がある
  • 他の従業員への示しがつかず、健診制度全体への協力意識が低下する
  • 体調不良を抱えたまま働く従業員が増え、プレゼンティーイズムによる生産性損失が拡大する

特にプレゼンティーイズムによる損失は数値化しにくいが無視できない規模になる場合が多く、損失額シミュレーターで自社の推計損失を確認しておくことが対策の第一歩になる。

よくある質問(FAQ)

Q: 健康診断を拒否する従業員を解雇できますか?
A: 拒否のみを理由とした即時解雇は困難だが、業務命令違反として段階的に懲戒処分を科すことは判例上認められている。まずは受診勧奨と面談を尽くすことが前提となる。
Q: 健康診断の受診を拒否する権利は従業員にありますか?
A: 労働安全衛生法上、従業員には受診義務があり、原則として拒否する権利はない。ただし医師の診断書提出等、代替措置により義務を果たせる例外規定がある。
Q: パート・アルバイトにも健康診断の受診義務はありますか?
A: 週の労働時間が正社員の4分の3以上、かつ1年以上の雇用が見込まれる場合は、パート・アルバイトにも受診義務が発生する。
Q: 健康診断を拒否されたまま放置した場合、会社の責任は問われますか?
A: 安全配慮義務違反として、労災発生時に会社が損害賠償責任を問われる可能性がある。受診勧奨の記録を残すことがリスク回避につながる。
Q: 懲戒処分を行う前に会社が準備すべきことは何ですか?
A: 就業規則に受診義務と懲戒事由を明記すること、書面での受診勧奨記録を残すこと、本人に弁明の機会を与えることの3点が必須となる。

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この記事の監修
中山友貴 / WellCon 健康経営コンサルタント

ストレッチジムの店舗運営と整体院向けSaaS「バディフル」(300院以上導入)を通じて、IT×店舗運営の両軸で健康経営支援に従事。「医学的根拠×IT定着×ROI可視化」を強みとするWellConを立ち上げ、従業員100〜300名の中堅企業向けに健康経営優良法人申請から運動プログラム定着まで一貫支援している。

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