治療と仕事の両立支援とは、がんや持病のある社員が働きながら治療できるよう会社が整える仕組みです。中小企業向けに手順を解説します。
- 治療と仕事の両立支援の定義と、中小企業が今対応すべき3つの理由
- 申出から復職後フォローまでの5ステップ
- 時差出勤・時短勤務・テレワークなど勤務配慮5制度の比較
- 休職・復職の規程に最低限入れるべき4項目
- 費用をかけずに定着させる週1回15分の面談設計
両立支援は、申出の受付→主治医意見書→両立支援プラン作成→勤務配慮→定期面談の5ステップで整えるのが結論です。中小企業は就業規則の規程と週1回15分の面談から始めれば、離職と生産性低下の両方を防げます。
治療と仕事の両立支援とは?中小企業が今取り組むべき3つの理由
治療と仕事の両立支援とは、病気の治療が必要な社員が離職せずに働き続けられるよう、会社が配慮と手続きを整える取り組みである。厚生労働省によると、労働者の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いている。
中小企業が取り組むべき理由は次の3つである。
- 人材流出の防止:がん罹患者の約3人に1人は20〜64歳の就労世代であり、診断後の離職は採用・育成コストの損失に直結する。
- 法対応:2026年4月施行の改正労働施策総合推進法で、事業主に両立支援の体制整備が努力義務として求められている。
- 生産性の維持:配慮なしで治療中の社員が出勤を続けると、プレゼンティーイズム(出勤していても能率が落ちる状態)が起きやすい。自社の損失額は損失額シミュレーターで試算できる。
この話、マンガで読めます(無料・登録なしで途中まで)健康経営が「お飾り」になる会社のワケマンガで読む →休職から復職まで|治療と仕事の両立支援を進める5ステップとは?
両立支援は、「申出→情報収集→プラン作成→配慮の実施→フォロー」の5ステップで進める。
- 申出の受付:本人からの申出を起点にし、相談窓口を人事または経営者に一本化する。
- 情報収集:本人の同意を得て、主治医へ勤務情報提供書を渡し、就業上の意見書を受け取る。
- プラン作成:業務内容・配慮内容・見直し時期を「両立支援プラン」として書面にする。
- 配慮の実施:時差出勤や時短勤務、業務の振り分けを実行し、周囲には必要な範囲だけ伝える。
- フォロー:週1回15分の面談で体調と業務負荷を確認し、3か月ごとにプランを見直す。
復職時は、主治医の診断書に加え、産業医または人事が業務遂行能力を確認する。いきなりフルタイムに戻さず、段階的に勤務時間を延ばす方法が有効である。
勤務配慮にはどんな種類がある?5つの制度を比較
勤務配慮は、時差出勤・時短勤務・テレワーク・通院休暇・時間単位年休の5種類が中心である。
| 制度 | 向いている場面 | 中小企業の導入負担 |
|---|---|---|
| 時差出勤 | 副作用や通院で朝の出勤がつらい | 低い(規程の追記のみ) |
| 時短勤務 | 抗がん剤・放射線治療の期間 | 中(賃金の扱いを決める) |
| テレワーク | 通院頻度が高い、免疫が低下している | 中(ツールと勤怠管理) |
| 通院休暇 | 定期通院が月1〜2回ある | 中(有給・無給の設計) |
| 時間単位年休 | 数時間で済む通院 | 低い(労使協定が必要) |
配慮は1つに絞らず、治療段階に合わせて組み合わせるのが基本である。当社の支援経験では、配慮の平均継続期間は3〜4年であり、長期運用を前提に設計する必要がある。
休職・復職の規程に最低限入れるべき項目は?
規程に必ず定める項目は、休職期間・賃金の扱い・復職判定・配慮期間の見直しの4つである。
- 休職期間:勤続年数に応じて設定する(例:勤続1年未満は3か月、5年以上は1年)。
- 賃金の扱い:無給とし、健康保険の傷病手当金(通算で最長1年6か月)を案内する。
- 復職判定:主治医の診断書と、産業医(不在なら人事)の確認を条件にする。
- 見直し:3か月ごとに配慮内容を本人と再確認する。
規程は作って終わりにすると形骸化しやすい。年1回の社内周知と管理職への説明を組み込み、形骸化させない進め方は形骸化解決ページで解説している。
治療と仕事の両立支援で失敗しやすい3つの落とし穴は?
失敗の原因は、情報の抱え込み・配慮の固定化・管理職任せの3つに集約される。
- 情報の抱え込み:本人の同意なく病名を共有するとトラブルになる。共有範囲は必ず本人と決める。
- 配慮の固定化:見直さない配慮は、周囲の不公平感と本人の就労意欲の低下を招く。
- 管理職任せ:現場判断だけでは対応がばらつく。窓口と判断基準は会社で統一する。
費用をかけずに両立支援を定着させるには?週1回15分設計
費用をかけない方法は、週1回15分の面談を固定枠で実施することである。確認項目は「体調」「業務量」「困りごと」の3つに絞る。
- 面談記録は1枚のシートにまとめ、本人と共有する。
- 配慮の変更は、記録をもとに3か月ごとに判断する。
- 産業医がいない場合は、地域産業保健センター(無料)を活用する。
外部の専門家に頼む場合のコンサル比較や選び方は、比較ページにまとめている。
よくある質問(FAQ)
- Q: 治療と仕事の両立支援は法律上の義務ですか?
- A: 努力義務です。2026年4月施行の改正労働施策総合推進法で、事業主は治療と仕事の両立支援の体制整備に努めることとされました。義務でなくても、離職防止のため早めの規程整備が有効です。
- Q: 社員ががんと診断されたら、会社は最初に何をすべきですか?
- A: まず本人の意向を聞き、相談窓口を一本化します。次に本人の同意を得て主治医へ勤務情報提供書を渡し、意見書を受け取ります。病名を無断で共有しないなど、プライバシー保護を徹底してください。
- Q: 休職中の社員の給与はどうなりますか?
- A: 無給とする会社が多く、健康保険の傷病手当金が支給されます。支給額は標準報酬日額の約3分の2で、支給期間は通算で最長1年6か月です。賃金の扱いは就業規則に明記しましょう。
- Q: 中小企業で産業医がいない場合はどうすればよいですか?
- A: 従業員50人未満は産業医の選任義務がないため、地域産業保健センター(無料)の活用が有効です。主治医意見書を軸にプランを作り、必要に応じて両立支援コーディネーターにも相談できます。
- Q: 復職後に配慮はいつまで続けるべきですか?
- A: 期間は一律ではなく、3か月ごとに見直すのが基本です。症状や治療の段階に応じて配慮を増減させ、見直しの記録も残しましょう。当社の支援経験では、配慮が続く期間は平均3〜4年です。
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