両立支援は中小企業でも小さく始められます。がん・心疾患で通院する社員を辞めさせない休暇制度・勤務調整・主治医連携の進め方を整理します。
- 中小企業が両立支援を始める前に整えるべき3つの前提
- 時間単位年休・傷病休暇・休職制度の違いと導入ポイント
- 勤務情報提供書と主治医意見書を使った連携5ステップ
- 週1回15分の面談で両立支援を続ける運用方法
両立支援は中小企業でも、休暇制度・勤務調整・主治医連携の3点を最小限整えれば始められる。相談窓口と勤務情報提供書を先に用意し、週1回15分の面談で運用すれば、通院社員の離職を防げる。
中小企業の両立支援とは? 義務の有無と基本の考え方
両立支援(治療と仕事の両立支援)とは、がんや心疾患などの病気を抱える社員が、治療を続けながら働き続けられるよう、事業場が休暇・勤務・健康面で配慮する取り組みである。
厚生労働省の治療と仕事の両立支援によると、何らかの疾病を抱えながら働く人は労働者の約3人に1人にのぼる。2026年4月からは、両立のための措置を講じることが事業主の努力義務となった。
専任の人事担当者がいない中小企業では、次の3点を先に整えるのが現実的である。
- 相談窓口(誰に申し出るか)を1人決める
- 休暇・勤務調整のルールを就業規則に明記する
- 病名などの情報を本人同意のもとで管理する
この話、マンガで読めます(無料・登録なしで途中まで)健康経営が「お飾り」になる会社のワケマンガで読む →通院社員に使える休暇制度は? 中小企業が整える3つの基本
最低限そろえるべき休暇制度は、時間単位年休・傷病休暇・休職制度の3つである。通院は1〜2時間や半日で済む日が多く、柔軟な取得単位が離職防止に直結する。
| 制度 | 内容 | 導入のポイント |
|---|---|---|
| 時間単位年休 | 年休を1時間単位で取得(年5日分まで) | 労使協定の締結が必要 |
| 傷病休暇 | 通院や体調不良のための特別休暇 | 有給・無給は会社が決められる |
| 休職制度 | 長期治療中も雇用を維持する仕組み | 期間と復職条件を明記する |
勤務調整は何を決める? 中小企業が押さえる4つの項目
勤務調整で決めるべきは、時間・場所・業務内容・見直し時期の4項目である。
- 時間:時差出勤、短時間勤務、通院日の配慮
- 場所:在宅勤務、通勤負担の少ない拠点への配置
- 業務内容:重量物運搬・出張・夜勤などの一時免除(心疾患では特に重要)
- 見直し時期:3か月ごとに本人と調整内容を再確認
がんの抗がん剤治療は副作用で体調に波が出るため、固定的な配慮より、体調に応じて変えられる設計が有効である。
主治医との連携はどう進める? 5ステップの手順
主治医との連携は、本人の同意を得て、会社が仕事の情報を渡し、主治医から就業上の意見をもらう流れで進める。
- 本人から配慮の申出を受け、情報共有の範囲を確認する
- 会社が「勤務情報提供書」に業務内容・勤務時間を記入し、本人経由で主治医へ渡す
- 主治医が就業の可否や配慮事項を意見書に記載する
- 産業医または産業保健総合支援センターの助言を得る
- 両立支援プランを作成し、本人と合意する
主治医は職場の仕事内容を知らないため、情報提供書の中身が連携の質を決める。
両立支援を形骸化させないコツは? 週1回15分設計で続ける
形骸化を防ぐコツは、週1回15分の短い面談を固定することである。上司または人事が本人と体調・業務量・困りごとを確認し、メモ1枚に残す。
当社の支援事例では、通院を伴う配慮の平均継続期間は3〜4年である。制度を作るだけでなく、長期で回す仕組みが欠かせない。
また、体調不良を押して働くプレゼンティーイズム(出勤していても生産性が落ちる状態)は損失が見えにくい。損失額シミュレーターで自社の影響額を試算し、代替要員や業務分担の予算根拠にするとよい。
よくある質問(FAQ)
- Q: 両立支援は中小企業でも義務ですか?
- A: 2026年4月から治療と仕事の両立支援は事業主の努力義務となった。罰則はないが、就業規則への反映と相談窓口の設置を進めておくと、社員の離職防止と安全配慮義務の面で安心である。
- Q: がんで通院する社員に最初にすべき対応は?
- A: 本人の意向を聞き、就業継続の希望と配慮してほしい点を確認する。次に本人同意を得て、勤務情報提供書を主治医へ渡し、意見書をもらう流れが基本である。病名の共有範囲は本人が決める。
- Q: 心疾患の社員にはどんな勤務調整が必要?
- A: 心疾患では、重量物の運搬、長時間の運転、高所作業、暑熱や寒冷の環境での作業が負担になりやすい。主治医の意見をもとに、業務の一時免除や時差出勤、段階的な復帰を組み合わせて調整する。
- Q: 休暇制度を新設すると費用はどれくらいかかる?
- A: 時間単位年休は労使協定の締結だけで導入でき、制度の新設費用はかからない。傷病休暇を無給にすれば人件費の増加もない。主なコストは規程改定の手間と、代替要員の調整にかかる時間である。
- Q: 相談できる公的な窓口はありますか?
- A: 労働者健康安全機構の産業保健総合支援センターが、無料で相談に応じている。両立支援促進員が規程づくりや個別ケースの助言も行う。従業員50人未満の事業場は地域産業保健センターも使える。
関連記事
- 中小企業の喫煙対策|受動喫煙防止の義務・喫煙所の扱い・禁煙外来の費用補助で進める禁煙支援
- 健康診断の再検査受診率を向上させる方法|未受診者へのフォロー・就業時間内受診・費用補助の仕組みづくり
- 従業員50人未満のストレスチェック義務化|施行スケジュール・外部委託の選び方・高ストレス者対応の実務
📘 この記事は健康経営の体系ガイドの一部です。全体像は健康経営とは?制度・認定・効果をまとめた完全ガイドでまとめて確認できます。
健康経営の導入・認定取得は、WellConの無料相談&プレゼンティーイズム損失シミュレーターからどうぞ。
