健康診断の費用負担は会社が行うのが原則です。法定項目の範囲とオプション検査代の扱いを整理します。
- 法定の健康診断は会社が全額負担する根拠(労働安全衛生法第66条)
- 会社負担となる6種類の健康診断と、受診時間の賃金の扱い
- 胃カメラ・乳がん検診・人間ドックなどオプション検査代の相場と負担の考え方
- 再検査費用、パート・アルバイト、税務処理まで含めた実務上の注意点
- 費用負担ルールを形骸化させない運用の作り方
法定の健康診断の費用は、労働安全衛生法にもとづき会社が全額負担します。胃カメラなどのオプション検査や再検査は法定外のため負担は任意で、会社の補助規程で決めます。受診時間の賃金は労使協議で定めますが、支払うのが望ましいとされています。
健康診断の費用負担は会社が原則?法的根拠は労働安全衛生法
法定の健康診断の費用は、会社(事業者)が全額負担するのが原則です。労働安全衛生法第66条は、事業者に労働者への健康診断の実施を義務付けています。実施が義務である以上、費用も事業者が負担すべきものとされており、従業員に請求することはできません。
厚生労働省によると、常時使用する労働者には、雇入れ時と年1回以上の定期健康診断を実施する必要があります。実施を怠ると、50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。また、常時50人以上の事業場は、定期健康診断の結果を労働基準監督署へ報告する義務もあります。
会社負担になる健康診断は何種類?対象と賃金の扱い一覧
会社が費用を負担する法定の健康診断は、主に6種類です。いずれも費用は会社負担で、従業員の自己負担はありません。
| 種類 | 対象・頻度 | 費用負担 | 受診時間の賃金 |
|---|---|---|---|
| 雇入時健康診断 | 入社時(常時使用する労働者) | 会社 | 労使協議(支払いが望ましい) |
| 定期健康診断 | 年1回以上 | 会社 | 労使協議(支払いが望ましい) |
| 特定業務従事者健診 | 深夜業など。6か月以内ごとに1回 | 会社 | 労使協議(支払いが望ましい) |
| 海外派遣労働者健診 | 6か月以上の派遣の前後 | 会社 | 労使協議(支払いが望ましい) |
| 特殊健康診断 | 有機溶剤・鉛・粉じんなどを扱う業務 | 会社 | 労働時間として支払いが必要 |
| 給食従業員の検便 | 給食業務に従事する労働者 | 会社 | 労使協議(支払いが望ましい) |
特殊健康診断は業務との関連が強く、受診時間は労働時間として賃金の支払いが必要です。一般の健康診断は、賃金の扱いを労使協議で決めます。ただし、円滑な受診のため支払うことが望ましいとされています。
胃カメラ・乳がん検診などオプション検査代は誰が払う?相場は?
オプション検査代は法定項目外のため、会社に負担義務はありません。会社が補助するか本人負担とするかは任意で、就業規則や健診規程で定めます。相場の目安は次のとおりです。
| 検査 | 費用相場の目安 | 会社負担の考え方 |
|---|---|---|
| 定期健康診断(法定11項目) | 5,000〜10,000円 | 全額会社負担(義務) |
| 胃カメラ(上部内視鏡) | 10,000〜20,000円 | 任意(一部補助が多い) |
| 乳がん検診(マンモ・エコー) | 3,000〜8,000円 | 任意(一部補助が多い) |
| 子宮頸がん検診 | 3,000〜6,000円 | 任意(一部補助が多い) |
| 腫瘍マーカー・血液オプション | 2,000〜10,000円 | 任意 |
| 人間ドック | 30,000〜50,000円 | 任意(上限額つき補助が多い) |
金額は医療機関や地域により異なる目安です。補助の設計例としては、35歳・40歳などの節目年齢で全額補助する方法、上限額を決めて半額補助する方法があります。加入する健康保険組合や協会けんぽの補助制度と組み合わせれば、会社の負担を抑えながら受診率を高められます。
再検査・精密検査の費用は会社が負担する?二次健康診断等給付とは
再検査・精密検査の費用は法定外のため、会社に負担義務はなく、原則は本人負担です。ただし、定期健康診断で血圧・血中脂質・血糖・腹囲またはBMIの4項目すべてに異常所見があった場合は、労災保険の二次健康診断等給付により、自己負担なしで受診できます。
会社には、有所見者への就業上の措置や医師の意見聴取といった事後措置の義務があります。費用を出さない場合でも、受診勧奨は欠かせません。要精密検査の放置は重症化と休職の原因になるため、勤務時間中の受診を認めるなど、受けやすい環境づくりが重要です。
パート・アルバイトの健康診断費用は会社負担?対象条件は?
1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上で、1年以上使用される見込みのパート・アルバイトは、正社員と同じく会社負担で受診させる義務があります。4分の3未満でも、2分の1以上であれば実施が望ましいとされています。
費用を本人に負担させる運用は、法定対象者である限り認められません。雇用形態にかかわらず、対象者の洗い出しを毎年行いましょう。
会社が負担した健康診断費用は経費になる?税務上の注意点
全従業員を対象とする健康診断費用は、福利厚生費として経費(損金)に算入できます。一方、人間ドックの補助を役員や特定の一部の人だけに行うと、給与として課税される恐れがあります。補助を設ける際は、全従業員が利用できる制度にしたうえで、税理士に確認すると安心です。
健康診断の費用負担ルールを形骸化させないためには?
負担範囲・補助上限・賃金の扱いを就業規則や健診規程に明文化することが、最も確実な対策です。ルールが曖昧なままだと、担当者ごとに対応が変わり、制度が形骸化解決ページで扱うような状態に陥ります。
私たちが健康経営を支援してきた現場では、週1回15分設計で人事と産業医が受診状況を確認する仕組みにした企業ほど、3〜4年続く傾向があります。受診の遅れや有所見者の放置は、不調を抱えたまま働くことによるプレゼンティーイズムの拡大につながります。自社の損失は損失額シミュレーターで試算できます。
経済産業省の健康経営の取り組みでも、健診受診率の向上は基本施策に位置付けられています。外部の支援を検討する場合は、比較ページでコンサルの選び方を確認してください。
よくある質問(FAQ)
- Q: 健康診断の費用は会社が全額負担しなければいけませんか?
- A: 法定の健康診断(雇入時・定期など)は会社が全額負担する義務があり、従業員への請求はできません。ただし胃カメラや人間ドックなど法定外のオプション検査は任意で、会社の規程で補助額を決められます。
- Q: オプション検査を本人が希望した場合、会社は費用を出す必要がありますか?
- A: 出す義務はありません。オプション検査は法定項目外のため、全額本人負担でも違法ではありません。ただし福利厚生として半額補助や節目年齢の補助を設ける企業も多く、受診率の向上につながります。
- Q: 健康診断を受けている時間の給与は支払われますか?
- A: 一般の定期健康診断は、賃金を支払うかどうかを労使協議で決めるとされています。ただし円滑な受診のため、支払うことが望ましいとされています。有機溶剤などの特殊健康診断は労働時間として賃金の支払いが必要です。
- Q: 再検査や精密検査の費用も会社が負担しますか?
- A: 再検査・精密検査は法定外のため会社に負担義務はなく、原則は本人負担です。ただし定期健診の血圧・血中脂質・血糖・腹囲またはBMIの4項目すべてに異常がある場合、労災保険の二次健康診断等給付で無料で受けられます。
- Q: 会社指定以外の医療機関で受けた場合の費用は誰が負担しますか?
- A: 労働者には医師を選ぶ自由があり、会社指定以外の機関で受診して結果を提出することも認められます。その場合の費用の扱いは会社の規程次第のため、あらかじめ就業規則に上限額や条件を明記しておくと揉めません。
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